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エマニュエル・トッド理論から解く日本「組織ができれば必ず直系家族的な思考が支配する」

Q3:われわれ一般人がトッドの理論を学ぶことは人生にどうフィードバックできますか。

日本における直系家族は院政後期の京都で生まれた

 日本における直系家族の成り立ちをここで押さえておきましょう。

 そもそも日本で直系家族が生まれたのは院政(平安時代末期から鎌倉時代が始まるまで)後期の京都を中心にした西日本。それが鎌倉時代の東国武士の誕生によって原理的・理念的に強烈な形で北東部に植えつけられていった。直系家族から排除された次男、三男が新たな土地を求めて北東部に行き、より先鋭的な形で直系家族制度を原理的に根付かせていったといえる。そこでは土地はたくさんあるのだから平等分割に、ということにはならなかった。

 そのため、北関東は直系の縛りがかえって強いですね。それと比べて日本の南西部は起源的で直系と関係がない核家族が半分ぐらいと考えていい。起源的というか、正しくは「双拠居住型」(夫の親族のもとに住む、妻の親族のもとに住む。いずれかの選択が可能)というべきかな。

 まあ、直系家族というのは江戸時代に理念的に成立したものなんですね。徳川幕府はそれまでの核家族的なモノを全部排除して、支配を容易にするために直系家族理念を前面に押し出した。三河や尾張と縁が深い徳川は必ずしも直系家族ではなかったとみられますが、家康は東国武士の理念を支配するためにうまくこれを使うようになった。言ってみれば日本の直系家族は徳川家康が設計したようなものです。

 こうしたいま自分たちが生きている国の家族類型、その歴史を知ること。こうした前提知識が人生の選択の幅を広げてくれます。

 

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鹿島 茂

かしま しげる

鹿島 茂(かしま•しげる)



1949年生。仏文学者。明治大学教授。専門は19世紀フランス文学。『職業別パリ風俗』で読売文学賞評論・伝記賞を受賞するなど数多くの受賞歴がある。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMAimagesSTUDIO」を開設。新刊に『神田神保町書肆街考』(筑摩書房)、『太陽王ルイ14世ヴェルサイユの発明者』(KADOKAWA)がある。Twitter アカウント:@_kashimashigeru


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